「特例子会社」か「障害者採用」働きやすいのはどっち? 経験者から学ぶリアルなメリット・デメリット!

身体障害者、知的障害者の方が就職・転職活動を考えた時、健常者とは異なる様々な困難が立ちはだかります。
例えば車椅子を利用している方であれば、エレベーターのない高層階のオフィスで働くことは現実的に非常に厳しいと言えるでしょう。
また、知的障害者の方も、理解ある周囲のサポートが存在しなければ、日々の仕事を進めていくことに困難が伴います。
そこで今回は、「特例子会社」と普通の会社の「障害者採用」で働いたことのある友人の身体障害者に、それぞれのメリット・デメリットを聞いてみましたので、ぜひ、参考にして頂ければ嬉しく思います。
▼目次
まずは障害者雇用率制度についてご紹介
まずは「障害者の雇用」の実態について、簡単にご紹介していければと思います。
すべての事業主は、法定雇用率以上の割合で、障害者を雇用する義務があります。
「権利」ではなく「義務」です。法律で明確に決まっています。
その割合についてですが、50人以上の事業所であれば、2.0%以上です。
つまり、50人の会社であれば、1人の障害者を雇用する義務があるということです。
引用元:厚生労働省HP「障害者の法定雇用率が引き上げになります」
なぜ障害者を雇用する義務があるのか?
厚生労働省の回答では、「共生社会」実現の理念があり、障害者がごく普通に地域で暮らし、地域の一員として共に生活できる社会を実現するためには、職業による自立を進めることが重要だからとあります。
要約すれば、障害者もやりがいのある仕事を見つけて、社会の一員として楽しく暮らしてほしいということだと思います。
私も含め私たちは、自分が健常者であることを普段は意識せずに暮らしています。
もし自分が障害者だからという理由で、仕事を見つけることが出来なかったらあなたはどう思いますか?
私は、とても辛いと思います。
だからこそ私たちは、全力で障害者が生き生きと働くことが出来る社会を作っていく「義務」があるのです。
日本国民の障害者の割合・人口は?
内閣府の、「平成25年版 障害者白書(概要)」によれば、日本国民の6%が何らかの障害を有しているとのことです。
【内訳】
・身体障害者:366.3万人
・知的障害者:54.7万人
・精神障害者:320.1万人
日本人の総人口は2014年の人口推計によると1億2729万8千人ですので、障害者の人口は、約764万人です。
日本の今後の成長のためにも、多くの障害者たちの雇用を推進していくことは必須ではないでしょうか。
特例子会社設立の要件は?メリットは?
障害者雇用の全体感についてご紹介してきましたので、本題に入っていきます。
まずは「特例子会社」制度の概要について少々堅い内容を書いていきますので、ご存知の方は読み飛ばして頂ければと思います。
【「特例子会社」制度の概要】
障害者雇用率制度においては、障害者の雇用機会の確保(法定雇用率=2.0%)は個々の事業主(企業)ごとに義務づけられている。
一方、障害者の雇用の促進及び安定を図るため、事業主が障害者の雇用に特別の配慮をした子会社を設立し、一定の要件を満たす場合には、特例としてその子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されているものとみなして、実雇用率を算定できることとしている。
また、特例子会社を持つ親会社については、関係する子会社も含め、企業グループによる実雇用率算定を可能としている。
○ 特例子会社認定の要件
(1) 親会社の要件
○ 親会社が、当該子会社の意思決定機関(株主総会等)を支配していること。
(具体的には、子会社の議決権の過半数を有すること等)
(2) 子会社の要件
① 親会社との人的関係が緊密であること。 (具体的には、親会社からの役員派遣等)
② 雇用される障害者が5人以上で、全従業員に占める割合が20%以上であること。また、雇用される障害者に占める重度身体障害者、知的障害者及び精神障害者の割合が30%以上であること。
③ 障害者の雇用管理を適正に行うに足りる能力を有していること。
(具体的には、障害者のための施設の改善、専任の指導員の配置等)
④ その他、障害者の雇用の促進及び安定が確実に達成されると認められること。
引用元:厚生労働省HP「特例子会社制度の概要」
少し難しいので、理解しやすいように具体例を挙げます。
私はトヨタグループの商社である豊田通商の子会社で3年間働いていましたので、豊田通商を例に出します。
「連結子会社が増えた200社ランキング」によれば、2015年時点で豊田通商は、662社の子会社を持っています。
その子会社のうち、従業員数が50人を超えているケースは非常に多く、前述の「障害者雇用率制度」を満たすために、それぞれの事業所で2.0%以上の障害者を雇用することは大変ハードルが高いと言えます。
ここで、特例子会社設立のメリットが発揮されます。
特例子会社とは、前述の要件(雇用される障害者が5人以上で、全従業員に占める割合が20%以上であること等)を満たすことができれば、設立することが出来ます。
例えば、豊田通商の特例子会社で、豊通オフィスサービス株式会社という会社があります。
主要業務の概要は、以下です。(引用元:豊通オフィスサービスHP)
1.事務用品、消耗品の調達及び管理事業
2.社有車の運行管理事業
3.郵便物、宅配物等の受発送に関する処理事業
以上の業務内容を見て、特例子会社設立のメリットがもうお分かりになった方もいらっしゃるのではないでしょうか?
どこの会社でも、事務用品や郵便物は必ず利用します。
豊田通商の例で言えば、662社のグループ会社に存在する事務用品や郵便物についての業務を、特例子会社に集約することが出来るので、非常に業務が効率化されます。
また、業務を限定することが出来るため、障害者にも配慮した職場環境を確保することが可能です。
さらに、親会社である豊田通商にも特例子会社設立のメリットがあります。
「特例子会社を持つ親会社については、関係する子会社も含め、企業グループによる実雇用率算定を可能としている。」
とあるように、豊通オフィスサービスで雇用している障害者の労働者数を、他のグループ会社で雇用しているとみなして、豊田通商の障害者雇用率に算出することが出来ます。
「特例子会社」と普通の会社の「障害者採用」で働いたTさんの体験談をご紹介!
特例子会社の概要についてご紹介してきましたので、最後に「特例子会社」と、普通の会社の「障害者採用」で働いたことのある私の友人Tさんの体験談をご紹介します!!
Tさんは車椅子を利用している身体障害者で、とあるアーティストのライブで意気投合し、仲良くなりました。
彼はとても明るく音楽が大好きで、日本全国色んな場所へ出かけては好きなアーティストのライブを見に行くという、とてもエネルギッシュな人です!
IT業界で働いているプログラマーで、特例子会社と普通の会社の「障害者採用」で働いたことがあり、今は特例子会社で働いています。
実は、特例子会社 → 障害者採用 → 特例子会社(出戻り)というキャリアです。
勘のいい方はお気付きかもしれませんが、彼にとっては特例子会社の方が性に合うとのことでした。
【Tさんから聞いた特例子会社のリアルなメリット】
- オフィス環境がバリアフリーで、移動、勤務がとても快適
- 業務内容が無理のない範囲でしっかりと作り込まれている
- 障害者の同僚もが多く、プライベートが充実する
では、なぜTさんは普通の会社の「障害者採用」にチャレンジしたのか?
その理由は、彼は前述の通りとても明るくエネルギッシュでしたので、特例子会社のしっかりと作り込まれた業務内容に若干の物足りなさを感じ、障害者だからと言って全く気を遣われない、厳しい環境の会社で勝負したい!と思ったからです。
「厳しい環境の会社」という表現は曖昧ですが、彼が転職した会社は従業員100人弱のいわゆる中小企業でした。
業務内容はそれはそれはハードで、毎日22時頃まで働いていました。
それでも転職して半年くらいは、「今やっている仕事はとても新しい分野で、本当に楽しい!」と私に話してくれました。
それから約1年後、彼から連絡があり、転職前の特例子会社にまたお世話になっているとのことでした。
あれから2年経ちますが、今も楽しそうに働いています。
今回の記事を書くために、改めて彼と電話で色々と話してみたところ、大手の特例子会社は若干業務に物足りなさを感じる点はあるものの、その他の職場環境や、障害者への配慮、何より障害者の同期がいることが、とても自分のライフスタイルに合っているとのことでした。一方で、障害者採用で普通の会社で働いた経験も、自分のキャリアにとって、非常に大切な経験だったと言っていました。
あくまで彼の意見ですが、とても賢く明るいナイスガイなので、「なるほど、そういうもんなんだろうな〜」と思っています。
どうやって転職を成功させたのか興味があったので、彼に聞いてみたところ、健常者とあまり変わりませんでした。
特例子会社へ転職した時は、リクルートエージェントを利用して仕事を探し、障害者採用で転職した時には、ラルゴ高田馬場という障害者採用に特化した就職サービスを行っている会社を利用して、転職したようです。
このラルゴ高田馬場という会社は、実に600社以上の紹介先を持ち、パソコンやコミュニケーションのスキルを向上させる職業訓練を行ってくれたり、履歴書の作成や模擬面接等も行ってくれるとのことで、Tさんも非常に多くのことを学んだと言っていました。障害者採用をお考えの方は、ぜひ利用を検討されるといいと思います。
ちなみに余談ですが、Tさんは今度イエモンことThe Yellow Monkeyのライブを見に広島に行くと言っていました。元気ですねぇ笑
まとめ
「特例子会社」か「障害者採用」働きやすいのはどっち?経験者から学ぶリアルなメリット・デメリットをご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
障害者の皆さんの就職・転職のお役に少しでも立てればと、色々と調べながら記事を書いていく中で、私自身多くのことを学ぶことが出来ました。
しかし、まだまだ障害者雇用については数多くの課題が残っています。
厚生労働省の「平成27年障害者雇用状況の集計結果」によれば、法定雇用率未達成企業の割合は47.2%と、まだ約半数の企業が、障害者雇用が満足に出来ていない状態です。
もちろん、オフィス環境の整備や、業務内容の精査などが必要になるので、いわゆる「普通の中小企業」が障害者雇用を充実させていくことは、簡単ではないでしょう。
しかし、今回の記事で触れたように障害者は日本に764万人もいます。
その中には、Tさんのような仕事が出来る貴重な人材も必ず数多くいますし、障害者にしか見つけられない視点で、新たなビジネスを起こしていける可能性も無限に眠っていると思います。
大企業はこれまでよりもっと特例子会社を増やす努力をして、中小企業も本腰を入れて障害者雇用に向けて動き出すことが、もしかしたら日本の経済を活性化させる手段の一つかもしれないな。なんてことを思いつつ、筆を置きたいと思います。
今回の記事が障害者の皆さんの就職・転職活動の参考になれば、とても嬉しく思います!
・特例子会社へ転職するなら:リクルートエージェント
・障害者採用で転職するなら:ラルゴ高田馬場
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とても興味深い記事で楽しく読ませていただきました。
どのようにビジネスをしているのか?
自分が頑張ることで雇用促進に繋げられないか?
という理由から勉強のために航空系特例子会社にいたことが
あるのですが良い印象がありませんでした。
若干パワハラに近い管理体制もあれば月刻みの頻繁な職場異動や
離職率が高いといったおかしな会社でした。
今でも障害者雇用は真面目に考えており、
特例子会社特有の問題をどう解消するべきなのかについて
考えることが時々あります。
アラサー外資系商社マンさんはこのような問題について
どのような認識、考えをお持ちなのかどうかについてぜひお聞き
したくコメントを残しました。何卒宜しくお願い致します。
田中様
コメントを頂きまして、ありがとうございます。
まず、障害者雇用の問題を憂うだけではなく、実際に行動に移されている田中様の情熱に驚くとともに、素晴らしいと感じました。
さて、記事に書いた通り私の知人はIT業界の大手特例子会社で働いておりますが、非常に充実した毎日を送っているようです。
一方、田中さんが経験したような問題がある特例子会社もあるようですね。
当然、そのような問題がある会社の体制は変えていく必要があると思います。
偉そうに聞こえてしまうかもしれませんが、私はすべての人が楽しく明るく元気よく働き、社会に貢献する権利があると思っています。
すべての人というのは、老若男女や障害の有無を問わずという意味です。
これからも障害者の方へ有益な情報が提供できるように、アンテナを高く張っていきたいと考えております。
また、お節介かと存じますが、田中様が現場で培われた知見等をブログ等でシェアして頂ければ、その情報は非常に障害者の方に有益なものになるかと思います。
長い返信となりまして恐縮ですが、今後もブログを楽しんでお読み頂ければ幸いです。
桜井
お返事をいただき誠に有り難うございます。
特例子会社はとても良い仕組みなのですが人によって
合う合わないの差がとても激しいのが難点です。
私の場合、環境面もありますがたまたま合わなかっただけです。
でも、実際には特例子会社のおかげで就労のチャンスが得られ、
1人の社会人として立派に全うされている方もいます。
そういう人を何人か知っていますし、心からリスペクトしていました。
現実と理想のバランスはとても難しく、私だけの意見で
特例子会社に対するイメージが少しでも固まってしまうのは
好ましいことではないでので控えた方が良いのではないかと思います。